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2025-11-14
職場のコミュニケーションを活性化させる環境整備の秘訣
2025-12-15目次
【はじめに】なぜ今、チーム内のフィードバックが重要なのか
- 「先生、うちの子が学校のグループワークでうまくいっていないみたいなんです。意見が言えなくて…」
- 「チームの雰囲気がピリピリしていて、なかなか率直な意見が出てこないんですよね」
こうした悩みをお持ちの方、少なくないのではないでしょうか。教育現場でも、職場でも、チームの中で信頼関係を築き、一人ひとりが安心して力を発揮できる環境を作ることは、今や最重要課題の一つです。
私は長年、学習環境と組織の関係性について研究してきましたが、チーム内の信頼関係と効果的なフィードバックの間には、強い相関関係があることがわかっています。特に現代社会では、多様な価値観や背景を持つメンバーがチームとして協働する機会が増え、お互いを理解し合い、成長を促進するコミュニケーションの重要性が高まっているのです。
実は、単なる「褒める」「叱る」ではない、適切なフィードバックこそが、チームの心理的安全性を高め、メンバー同士の信頼関係を構築する鍵となります。
アメリカの研究(https://natsuyo-speech.media/buiness/7pointsforgreatfeedback/)によれば、効果的なフィードバックがあるチームは、そうでないチームに比べて生産性が23%も高いという結果も出ています。
このような悩みはありませんか?
- チームメンバーが本音で話せていない
- フィードバックが一方的な批判になってしまう
- 改善点を伝えると人間関係が悪化する
- ポジティブなフィードバックが少ない
この記事では、私たちが「まなびかたlab」で実践している、チーム内の信頼を築くための効果的なフィードバック方法を7つのステップでご紹介します。教育現場でも、家庭でも、職場でも応用できる実践的な内容となっていますので、ぜひ最後までお読みいただき、明日から試していただければ幸いです。
この記事でわかること
- 心理的安全性がチームの信頼関係とパフォーマンスに与える影響
- 効果的なフィードバックの3つの基本原則(心理的安全性・目的の明確化・双方向コミュニケーション)
- SBI型フィードバックをはじめとする7つの実践ステップ
- 日本特有のフィードバック文化の課題と乗り越え方
- 教育現場やビジネスチームでの具体的な成功事例
この記事で解説する内容
- チーム内の信頼を築くフィードバック7つの実践ステップ
- フィードバックの適切なタイミングと頻度、非言語コミュニケーションの重要性
- フィードバックを受ける側の心構えと成長マインドセットの育て方
- 日本の組織文化における課題(遠慮・和の文化・上下関係)への対処法
- 明日から実践できる具体的なアクションと、小学校・中学校・企業での実際の成功事例
この記事を書いた人
公認心理師・ブレインジムインストラクターの吉尾 香奈子が執筆・監修。
元小中学校教員として10年間で1000人以上の子どもを指導。現在は教育委員会巡回相談員、心理検査員、子どもの発達に関するNPO副代表理事などを務める。教育・心理・経営の専門知識と現場経験に基づき、理論と実践のバランスを重視。心理学や海外の教育メソッドなどの専門知識を、今日から教育現場で使える知識として提供。「学び方」「働き方」「生き方」の多様性を尊重し、一人ひとりが輝ける社会を目指している。
本記事は、『まなびかたlab』代表の吉尾が自身の経験や知識をもとに執筆しています。ぜひあなたの企業でも実践していただければ幸いです。それでは、まず効果的なフィードバックの基本となる3つの原則から見ていきましょう。
効果的なフィードバックの基本:信頼関係を構築する3つの原則
心理的安全性の重要性
フィードバックを効果的に行うための土台となるのが、「心理的安全性」です。心理的安全性とは、「チーム内で自分の意見や考えを表明しても、拒絶されたり罰せられたりしないという確信」を指します。
Google社が行った「Project Aristotle」という研究では、最も成功するチームの共通点として、この心理的安全性が最も重要な要素であることが明らかになりました。つまり、メンバーが安心して意見を言える環境があってこそ、フィードバックが活きるのです。
私が以前関わった小学校のあるクラスでは、「間違えても大丈夫」「わからないことは質問していい」という雰囲気を教師が意識的に作り出したことで、子どもたちの発言が活発になり、お互いに助け合う姿勢が生まれました。これは心理的安全性の好例と言えるでしょう。
原則1:心理的安全性を高めるためる
- 失敗を学びの機会として捉える文化を作る
- 「人」ではなく「行動」や「状況」に焦点を当てる
- 批判よりも好奇心を持って相手の意見を聞く姿勢を示す
原則2:フィードバックの目的を明確にする
効果的なフィードバックを行うためには、その目的を明確にすることが重要です。フィードバックの目的は大きく分けて以下の3つがあります:
1. 手の成長を促進する:スキルや能力を伸ばし、可能性を広げる
2. 相互理解を深める:お互いの考え方や価値観を理解し合う
3. チーム全体のパフォーマンスを向上させる:共通の目標達成に向けた協力体制を強化する
これらの目的を意識せず、ただ「評価するため」や「欠点を指摘するため」にフィードバックを行うと、相手の防衛反応を引き起こし、信頼関係を損なう可能性があります。
フィードバックを始める前に「このフィードバックで何を達成したいのか」を明確にし、できれば相手にもその意図を伝えることで、より建設的な対話が生まれやすくなります。
原則3:双方向コミュニケーションを意識する

真に効果的なフィードバックは、一方通行ではなく双方向のコミュニケーションです。「教える側」と「教えられる側」という固定的な関係ではなく、お互いから学び合う関係性を構築することが大切です。
フィードバックの研究(https://nozbe.com/ja/blog/how-to-receive-and-give-feedback/)によれば、フィードバックを受ける側が自分の考えや感情を表現する機会があるとき、そのフィードバックの受け入れ度合いが40%以上高まるというデータがあります。
例えば、小学校の教員をしていた時、児童の作品へのコメントを一方的に書くだけでなく、「これについてどう思う?」と質問を投げかけ、対話の中でフィードバックを行うようにしたところ、子どもたちの理解度と意欲が大幅に向上したという経験があります。
フィードバックは押し付けではなく、対話です。相手の反応を見ながら、共に学び合う姿勢が重要です。
双方向コミュニケーションを促進するためのポイント
- 質問を通じて相手の考えを引き出す
- 相手の反応をよく観察し、理解度や受け止め方を確認する
- 自分のフィードバックについても相手からのフィードバックを求める姿勢を持つ
これら3つの原則を土台として、次章では具体的な実践ステップについて詳しく見ていきましょう。
チーム内の信頼を築くフィードバック7つの実践ステップ

ステップ1:状況と行動に焦点を当てる(SBI型フィードバック)
効果的なフィードバックの第一歩は、個人の性格や人格ではなく、具体的な状況と行動に焦点を当てることです。この考え方に基づいた方法が「SBI型フィードバック」です。
SBI型フィードバックは以下の3つの要素で構成されています:
- Situation(状況):どのような場面での出来事かを明確に伝える
- Behavior(行動):その場で相手が取った具体的な行動を伝える
- Impact(影響):その行動がどのような影響や結果をもたらしたかを伝える
SBI型フィードバックの例
効果的でない例:「あなたは不真面目だ」
効果的な例:「先週のプロジェクト会議(状況)で、あなたが事前準備をして具体的な提案をしてくれたこと(行動)のおかげで、チーム全体の議論が深まり、短時間で良い結論が出せました(影響)」
私が担当していた中学生のグループワークでも、「あの子は協力的じゃない」という表現ではなく、「今日の話し合いで(状況)、○○さんが意見を出していなかったとき(行動)、グループの議論が停滞してしまいました(影響)」という伝え方をすることで、生徒たちも自分の行動の影響を客観的に理解できるようになりました。
SBI型フィードバックを実践する際のポイント
- 最近の具体的な出来事を選ぶ
- 「いつも」「絶対に」などの一般化した表現を避ける
- 観察した事実と主観的な解釈を区別する
ステップ2:ポジティブフィードバックの効果的な活用法

フィードバックというと、どうしても「改善点の指摘」というネガティブな側面に目が行きがちですが、実はポジティブフィードバックも信頼関係構築には欠かせません。
アメリカの研究(https://www.works-i.com/works/special/no185/prescription-15.html)によれば、最も効果的なチームでは、ネガティブなフィードバックに対してポジティブなフィードバックの比率が5:1程度だと言われています。つまり、5回の肯定的なフィードバックがあれば、1回の改善点の指摘も建設的に受け止められるのです。
効果的なポジティブフィードバックのポイントは以下の通りです:
- 具体的に伝える:「よくできました」ではなく、何がどう良かったのかを具体的に
- タイミングを逃さない:良い行動を見たらすぐにフィードバックを行う
- 公の場で行う:適切な場合は、チーム全体の前でポジティブフィードバックを行い、その価値を共有する
ポジティブフィードバックの例
効果的でない例:「みんな、よく頑張りましたね」
効果的な例:「今日のディスカッションでは、特に田中さんが他の人の意見をしっかり聞いてから自分の考えを述べていたのが素晴らしかったです。そのおかげで議論が深まりました」
ステップ3:建設的な改善フィードバックの伝え方
改善点を伝える際のフィードバックは、慎重に行う必要があります。しかし、適切に伝えられれば、相手の成長を促し、チームの信頼関係を強化することにもつながります。
建設的な改善フィードバックのコツは以下の通りです:
- サンドイッチ法を活用する:改善点を、2つのポジティブなフィードバックで挟む形で伝える
- 「私」メッセージを使う:「あなたは間違っている」ではなく「私はこう感じた/考えた」と伝える
- 解決策の共同探索:一方的な指示ではなく、「どうすればよいと思う?」と相手の考えを引き出す
- 成長の機会として伝える:「できていない」ではなく「より良くなる可能性がある」という視点
建設的な改善フィードバックの例
効果的でない例:「レポートの締め切りに遅れるなんて、あなたは責任感がない」
効果的な例:「今回のレポートは内容が充実していて良かったです(ポジティブ)。一方で、締め切りに遅れたことで、私たちのスケジュールに影響が出ています(改善点)。あなたの分析力はチームの大きな強みなので、次回はどうすれば期限内に提出できるか一緒に考えましょう(ポジティブ+解決志向)」
ステップ4:非言語コミュニケーション
フィードバックでは、言葉の内容だけでなく、伝え方も非常に重要です。研究によれば、コミュニケーションの印象は、言語情報よりも非言語情報(表情、声のトーン、姿勢など)のほうが大きな影響を与えるとされています。
効果的な非言語コミュニケーションのポイント:
- アイコンタクト:適度なアイコンタクトで、相手への関心と尊重を示す
- オープンな姿勢:腕を組まずに、オープンな姿勢でコミュニケーションを取る
- 声のトーンとスピード:穏やかで明瞭な声で、相手が理解できるスピードで話す
- 表情:特に改善点を伝える際は、批判的な表情ではなく、思いやりのある表情を心がける
私の経験では、同じ内容のフィードバックでも、笑顔で伝えるか、眉をひそめて伝えるかで、相手の受け止め方が大きく変わります。特に子どもたちは、大人の表情や声のトーンに敏感ですので、言葉の内容以上に、その背後にある感情や意図を読み取っています。
非言語コミュニケーションは「どう言うか」という問題です。同じ言葉でも、伝え方によって全く異なるメッセージになります。
ステップ5:フィードバックのタイミングと頻度
効果的なフィードバックを行うには、適切なタイミングと頻度が重要です。一般的には、以下のようなガイドラインが効果的とされています:
- 1即時性を大切に:行動から時間が経つほど、フィードバックの効果は薄れる
- 定期的な機会を設ける:週次や月次のミーティングなど、定期的なフィードバックの機会を作る
- 相手の受容状態を見極める:感情的に動揺している時は避け、落ち着いた状態で行う
- プライバシーに配慮:特に改善点については、適切な場所でプライバシーを守って伝える
例えば学校の現場では、テストの後すぐに個別フィードバックを行うことで、生徒の理解度が大幅に向上するという経験もあります。また、企業においても、年に1回の評価面談よりも、月に1回の短いフィードバックミーティングのほうが、パフォーマンス向上に効果的です。
私の場合、週の終わりに15分程度のフィードバックタイムを設け、チームメンバーと1対1で話す機会を作ることで、小さな問題が大きくなる前に解決できるようになりました。
効果的なフィードバックのタイミング
- ポジティブフィードバック:できるだけ即時に、場合によっては公の場で
- 改善フィードバック:落ち着いた環境で、プライバシーに配慮して
- 定期的なフィードバック:週1回や月1回など、予測可能なリズムで
ステップ6:フィードバックを受ける側の心構えと成長マインドセット
効果的なフィードバック文化を築くには、フィードバックを与える側だけでなく、受ける側の姿勢も重要です。ここでは、フィードバックを建設的に受け取るためのポイントを紹介します:
- 防衛反応を意識する:批判を受けたときの自然な防衛反応を認識し、意識的にオープンな姿勢を保つ
- 成長マインドセット:フィードバックを「自分の価値への否定」ではなく「成長の機会」と捉える
- 明確化のための質問:曖昧なフィードバックは、質問を通じて具体化してもらう
- 行動計画の作成:フィードバックを受けた後、具体的にどう改善するかの計画を立てる
スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック教授の研究によれば、「成長マインドセット」(能力は努力で成長するという信念)を持つ人は、フィードバックをより建設的に受け止め、実際の成長にもつながりやすいとされています。
私が指導している教師研修でも、「このフィードバックは自分を否定しているのではなく、より良い教師になるためのギフトだ」という考え方を強調しています。この姿勢が根付いたチームでは、お互いのフィードバックがより活発に、そして建設的に行われるようになりました。
フィードバックは贈り物です。それを受け取るかどうか、どう活用するかは、受け手の姿勢次第です。
ステップ7:チーム全体でフィードバック文化を育てる方法

最後に、これまでの実践ステップをチーム全体の文化として定着させる方法について考えてみましょう:
- リーダーからの率先垂範:リーダー自身がフィードバックを求め、受け入れる姿勢を示す
- フィードバックの訓練:チーム全体で効果的なフィードバックの方法を学ぶ機会を設ける
- 成功を祝う:フィードバックによる成長や改善があった場合、それを積極的に認め、祝う
- 安全な場の創出:定期的なふりかえりの場を設け、誰もが安心して意見を言える環境を作る
Google社では「感謝の壁」という取り組みがあり、チームメンバー同士が感謝やポジティブなフィードバックを書き込める場所を設けています。このような小さな取り組みから始めることで、フィードバック文化が徐々に根付いていきます。
私の経験では、学期の始めに「私たちのチームでのフィードバックのルール」を全員で話し合って決め、教室に掲示しておくことで、子どもたちも自然とポジティブなフィードバックを交換するようになりました。
チームで試してみよう:フィードバックカルチャーを育てるためのアクティビティ
- 週に一度「感謝のサークル」を設け、各メンバーが他のメンバーへの感謝やポジティブなフィードバックを伝える時間を作る
- 「フィードバックボード」を設置し、付箋などを使って気軽にポジティブフィードバックを書き込めるようにする
- 月に一度「チームの成長振り返り」の時間を設け、チーム全体の成長や改善点について話し合う
これら7つのステップを意識して実践することで、チーム内の信頼関係が徐々に深まり、心理的安全性の高い環境が整っていきます。しかし、実際の現場では様々な障壁にぶつかることもあるでしょう。次章では、そうした障壁とその乗り越え方について考えていきます。
よくある障壁とその乗り越え方

日本特有のフィードバック文化の課題
日本の組織や教育現場では、欧米とは異なるフィードバックの文化的背景があります。これらの特徴を理解し、適切に対応することが重要です。
- 遠慮と和の文化:直接的なフィードバックを避ける傾向
- 集団主義:個人への明示的なフィードバックよりも、集団全体への曖昧なフィードバックが多い
- 上下関係の重視:目上の人からのフィードバックは受け入れるが、下から上へのフィードバックは少ない
- 「空気を読む」文化:明示的なフィードバックなしでも期待を察することを重視
[日本企業のフィードバック文化に関する研究](https://japanintercultural.com/ja/%E7%84%A1%E6%96%99%E3%81%AE%E3%83%AA%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B9/%E8%A8%98%E4%BA%8B/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%AF%E8%A8%80%E8%91%89%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%AB%E3%81%82%E3%82%89%E3%81%9A/)によれば、日本の組織では「フィードバックという習慣が文化に定着していない」ケースが多いとされています。
日本の文化における効果的なフィードバックアプローチ
- 小さな一歩から始める:まずは少人数の信頼できる関係の中でフィードバックを実践
- 「良いところ探し」から:ポジティブフィードバックから始めることで抵抗感を減らす
- 非公式な場の活用:1対1の対話や、ランチタイムなどリラックスした場でのフィードバック
- 文化変革の意義を伝える:フィードバック文化がチームにもたらす利点を具体的に示す
私が以前関わった日本の小学校では、まず「いいところみつけカード」という取り組みから始め、子どもたちがお互いの良いところを見つけて伝え合う習慣を作りました。この小さな一歩から、徐々に建設的なフィードバックができる雰囲気が育っていきました。
感情的になりがちな場面での対処法
フィードバックの場面では、時に感情が高ぶってしまうことがあります。特に改善点の指摘や難しい話題を扱う際には、感情的にならないよう以下の対処法を心がけましょう:
- クッションワードを使う:「もしよければ」「可能であれば」など、柔らかな表現を使う
- 一呼吸おく:感情的になりそうな時は、深呼吸してから話を続ける
- 別の機会に延期する:互いが冷静になれない場合は、「また改めて話し合いましょう」と提案
- 「事実」と「感情」を分ける:「この行動によって、私はこう感じました」と分けて伝える
アメリカの組織心理学者エイミー・エドモンドソンは、「難しい会話こそ、事前に自分の感情を整理し、相手との信頼関係を念頭に置いて行うことが重要」と指摘しています。
感情的になりがちな場面での対処例
効果的でない対応:「なんでいつもこうなんだ!何度言ったらわかるんだ!」(感情的な反応)
効果的な対応:「今は少し感情的になっているので、一度落ち着いてから改めて話し合いましょう。明日の午前中に時間をとれますか?」(冷静な判断で延期)
私自身も、以前あるチームで意見が対立した際、その場で議論を続けるのではなく、「今日はここまでにして、明日改めて話し合いましょう」と提案したことがあります。翌日、冷静になって再度話し合ったところ、建設的な解決策を見出すことができました。
フィードバックが機能していない兆候と改善策
チーム内でフィードバックが効果的に機能していない場合、以下のような兆候が現れることがあります:
- 同じ問題が繰り返される:フィードバックが行動変容につながっていない
- 沈黙や表面的な同意:本音が語られず、建前だけのコミュニケーション
- フィードバックの回避:互いにフィードバックを避け、問題から目を背ける
- 防衛的な反応:フィードバックに対して言い訳や正当化が多い
フィードバックが機能していない場合の改善策
- メタコミュニケーション:「私たちのフィードバックの方法自体について話し合ってみませんか」と提案
- 第三者の視点を入れる:外部のファシリテーターやコーチの助けを借りる
- フィードバックのルールを再確認:チーム全体でフィードバックの原則を見直す
- 少人数からの再スタート:信頼関係のある少人数のグループからやり直す
組織コミュニケーションの研究(https://www.projectdesign.co.jp/knowledge/psychological-safety/)によれば、フィードバックが機能していないチームでは、まず「フィードバックについてのフィードバック」から始めることが効果的だとされています。
私が関わったある学校では、教員間のフィードバックがうまく機能していなかったため、「どんなフィードバックが自分にとって役立つか」を互いに伝え合うワークショップを行いました。これにより、各教員の受け取り方の違いを理解し、より効果的なフィードバック方法を見つけることができました。
次章では、実際にフィードバックを通じてチームが成長した事例をいくつか紹介します。
フィードバックを通じたチーム成長の成功事例
教育現場での実践例
事例1:小学校の協働学習プロジェクト
ある小学校の6年生のクラスでは、総合的な学習の時間で地域の環境問題について調査するプロジェクトを行っていました。しかし、グループワークがうまく機能せず、一部の児童だけが作業を進め、他の児童は参加していないという状況がありました。
そこで担任の先生は、以下のようなフィードバックの仕組みを導入しました:
1. 毎日のプロジェクト終了時に5分間の「振り返りサークル」を設け、「今日良かったこと」と「明日に向けての改善点」を共有
2. 「2つの良いところ、1つの改善点」というルールでお互いにフィードバック
3. 教師も同じルールでフィードバックに参加
この取り組みにより、子どもたちは自分の行動が他のメンバーにどう影響するかを理解し、徐々に全員が積極的に参加するようになりました。プロジェクト終了時には、初期に比べて協力的な姿勢が大幅に向上し、最終発表も素晴らしい内容になったとのことです。
中学校の部活動での取り組み
あるバスケットボール部では、試合での連携がうまくいかず、チームワークに問題を抱えていました。そこで顧問の先生は、以下のようなフィードバック方法を取り入れました:
1. 試合後のビデオ分析で、SBI型フィードバックを全員で実践
2. キャプテンを中心に「フィードバックタイム」を設け、ポジションごとに改善点を共有
3. 「自分へのフィードバック」も行い、自己評価の習慣を身につける
この取り組みにより、チームメンバー間の信頼関係が向上し、特に「失敗を指摘し合える関係性」が構築されました。その結果、地区大会で過去最高の成績を収めることができたそうです。
「自分たちのプレーを改善するためのフィードバックは、批判ではなく、チームへの貢献なんだ」という考え方が浸透したことが、成功の鍵でした。
ビジネスチームでの成功事例
事例1:IT企業の開発チーム
あるIT企業の開発チームでは、納期遅れや品質問題が頻発していました。原因を分析したところ、問題が発生しても指摘し合えない文化があり、結果的に小さな問題が大きくなっていることがわかりました。
そこでチームリーダーは以下の取り組みを行いました:
1. 週次の「レトロスペクティブ」ミーティングの導入
2. 「よかった点」「改善点」「試したいこと」の3つのフレームワークでフィードバック
3. リーダー自身が積極的にフィードバックを求める姿勢を示す
この取り組みにより、チーム内でのフィードバックが活発になり、問題の早期発見・対応が可能になりました。その結果、プロジェクトの納期遵守率が40%から95%に向上し、顧客満足度も大幅に改善したとのことです。
事例2:小売企業の接客サービス向上
ある小売企業では、接客サービスの質にばらつきがあり、顧客満足度の向上が課題でした。そこで店長は以下のようなフィードバック制度を取り入れました:
1. 「サービスヒーロー」制度:優れた接客を行ったスタッフを同僚が推薦
2. 「サービスモーメント」の共有:朝礼で前日の良かった接客場面を共有
3. 顧客からのフィードバックを全スタッフで共有し、改善策を一緒に考える
このアプローチにより、スタッフ間で良い事例が共有され、互いに学び合う文化が生まれました。結果として、顧客満足度調査のスコアが6ヶ月で15%向上し、リピート率も増加したという成果が報告されています。
成功事例から学ぶポイント
- フィードバックの仕組みを明確にし、習慣化する
- ポジティブなフィードバックを積極的に取り入れる
- リーダー自身が模範を示す
- フィードバックを「評価」ではなく「学びと成長の機会」として位置づける
【まとめ】明日から実践できるフィードバックの第一歩
この記事では、チーム内の信頼を築くための効果的なフィードバック法として、7つの実践ステップを紹介してきました。最後に、明日から実践できる具体的なアクションをまとめておきます。
明日から実践できる5つのアクション
- 心理的安全性を高める一言を意識する:「ありがとう」「興味深い視点だね」「それについてもっと聞かせて」など
- SBI型フィードバックを試してみる:状況、行動、影響を明確に区別して伝える練習をする
- ポジティブフィードバックの比率を高める:まずは「5:1の法則」を意識し、肯定的なフィードバックを増やす
- フィードバックの時間を設ける:週に一度、15分程度の振り返りの時間を作る
- 自分自身がフィードバックを求める:「私の○○についてどう思う?」と積極的に聞いてみる
効果的なフィードバックの文化は一朝一夕には作れませんが、小さな一歩から始めることが重要です。最初は少し居心地の悪さを感じるかもしれませんが、継続することで徐々にチーム内の信頼関係と心理的安全性が高まっていくでしょう。
そして何より大切なのは、フィードバックを「評価」ではなく「成長のためのギフト」と捉える視点です。私たちは皆、より良くなる可能性を秘めています。その可能性を引き出し合える関係こそが、真の意味での「チーム」なのではないでしょうか。
皆さんのチームでも、この記事で紹介したフィードバック法を参考に、信頼と成長の循環を生み出していただければ幸いです。





